昨日、
卯刻が女友達Aと別れた。
深夜に電話が掛かってきて、その旨聞いた。
彼は泣いていたようだった。
「振るのはつらいね」と言っていた。
カノジョの気持ちを考えたら、そりゃあつらいだろう。
傷心というか、疲弊している彼だった。
「誰かに甘えたい気分」なんて言うので、「誰でもいいの?」と。
「訂正するよ」と彼は返した。
「別れたんだから、明日うちに来てよ」と疲れきった風に言う彼。
「そうだね。君は一人になった。でも、私が君の家に行くには、もう一つ条件があるんだ」
そういうと彼は押し黙った。
しばらくして「つまり、“私と付き合うの? 付き合わないの?”ってこと?」
「そう。私の立場、立ち位置を明確にして」
彼は悩んでいた。
酷く悩んでいた。
「別れる前は『別れたら即付き合おう』と思っていたんだ。でも、いざ別れてみると……そんな気になれなくて」
人を傷つけた、その事実が彼をネガティブな方向へと導いたのだろう。
「それに、今付き合ったらのめり込んじゃいそうな気がするんだ」
「こちらとしてはうれしい限りだけどね」
「もう一人の俺が言うんだ。『お前は一人でいたほうがいい』って」
そこまで言われちゃ急げない。
それに、女友達Aの気持ちも考えると、彼がすぐ私と付き合うというのは、得策でないとも思った。
「了解。確かに、振ったあとすぐ別の人と付き合うのは更に心痛かろう。ましてや、相手(女友達A)にゃソレを伝えてないんだ。……君が付き合いたいと思えるまで、待ってるよ」
「うん。そうしてくれるとありがたい」
ということで、卯刻は女友達Aと別れたが、私とはまだ付き合うに至っていない。
蟻を絡めていた蔓(つる)は取れた。
あとは蟻が完全落ちるのを、地獄で待つのみ。
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