現場は満員電車。
私は人に流され車両の真ん中に位置していたが、それでも隙間なんてないくらいすし詰め状態。
あとからあとから人が入ってきたのだ。
私は膝上丈のワンピースを着ていたが、裾がずり上がっていくのを感じ、急いで戻した。
人がたくさん入ってきたから、それでだと思った。
というか、そう思いたかった。
痴漢ってのは面倒だったから。
人の出入り(ほぼ入り)はなくなり、電車が発車したときである。
私のおしりをあからさまに触って……いや、「掴む」と表現したほうが正しいか。掴んできた。
「怖い」より「気持ち悪い」「面倒くさい」という思いが沸いた。
振り向いて後ろに立っていた痴漢をにらむと、痴漢は手をおしりから離した。
でも、それは一瞬だけ。
すぐにまたおしりを触ってきた。
また私は痴漢をにらむ。
その度やめるも、すぐに再開する痴漢。
大声で「痴漢は犯罪です」と言いたかったが、面倒だと思ったのでやめた。
(ここで「怖い」と発想しないのは危険だと後に反省。)
電車が駅に止まる。
そこで大勢の人が降りた。
隙間が出来、痴漢は私から離れた。
ただ、振り返れば見える範囲にいた。
あちらはチラチラこちらを見ていた。
私は考えていた。
あの痴漢を捕まえるかどうか。
ただ、授業に欠席するのは嫌だという思いが強かった。
(結構真面目なottoちゃんです。)
でも、今思えば授業を休むことになっても捕まえるべきだったと思う。
降車駅で、痴漢はすぐ近くの扉からは下りず、わざわざ私に近寄り再度痴漢行為に及んだのである。
流石に「面倒」より、「憤慨」が勝った私は痴漢の腕を掴んだ。
それほど大きくない声で「なにしてるんですか」と。
すると痴漢は「俺じゃねえよ!」と怒ったのだ。
私は気が弱いのでちょっと何も言えなかった。
痴漢は手を振りほどき何か叫んだ。(なんと言ったかは覚えてない)
手を振りほどかれた時、暴力を振るわれたら怖いという思いが出た。
でも、私は駅のホームで大声で叫んだ。
「痴漢したじゃないですか!」と。
しかし、痴漢は走り去った。
私は追えなかった。
なんで叫べたのに追えなかったのか、もうわからない。
多分根底にあった思いは「面倒くさい」「欠席したくない」だったんだろうな。
とてつもなく後悔している。
もし私がきちんと捕まえていれば、あの痴漢は犯罪者として確定され社会的に不利な立場に追い込めたというのに。
きっとあの痴漢はまたやる。
今回の件は痴漢に自信を付けさせてしまった。
「とにかく否定して逃げれば、捕まらない」と。
また遭ったら絶対捕まえてやる。
次はどんな授業でも捕まえる。
本当に、面倒なことしないでほしい。
PR