もしかして、やはり、
笑芽は私が
卯刻に告白した際、起きていたのではないか?
わからない、わからないけど、不安なんだ。
最初に私が卯刻に告白したのは、卯刻の家に笑芽と泊まった際の夜。
笑芽は就寝したと思われる時間、「今の彼女と別れて、私と付き合ってみない?」と軽い風に。
そこで卯刻は笑って「何言ってるの?(笑)ダメだよ~(笑)」とふざけた風に返していた。
そのとき、いや正確にはその話題が終わりかけたとき、笑芽はお手洗いに起きた。
寝ぼけ眼でお手洗いへと歩いていった彼女だったが、もしあの時、意識がハッキリしていて、話を中断させるために起きてきたのだとしたら、どうか。
彼女が狸寝入りしていないなんて確証はないのだ。
つまり、告白したことを聞かれている可能性がないわけではない。
今更、聞けない。
「あの時、起きていたの?」なんて。
もし「起きていた」と言われたら、どうする?
彼女はどう思う?
きっと冗談で告白したと思っているだろう。
実際、最初は冗談のようなものだった。
ただ、卯刻と付き合ったら楽しいだろうなという思いしかなかった。
でも、今はどうだ。
そうじゃないだろ。
笑芽としては、私の心情や卯刻との関係は知らない状態であるが、飲み会での私の卯刻への絡み様を見て、私が卯刻へ思いを馳せていると推測するかも知れない。
しかし、
井達へ相談していることを考えると、その(事実である)不安は、杞憂であると思っているかもしれない。
井達は私が同性愛者であることを知っているのだから、まさか本気で卯刻に気があるとは思ってはいないだろう。
彼女から「ottoが告白しているのを聞いた。彼女は本当は卯刻を好きなのではないか」と相談されても、彼なら確固たる意思を持ち「それはありえない。あのottoだ、
篤太のような人を好いていたottoが卯刻を好きになるとは思えないし、アイツなら冗談で告白ぐらい出来る。だから、心配ない」と。
そう言ったか、もしくは笑芽が本当に私が告白した際に寝ていたかしていなければ、井達は私に忠告するなんてことはない。
私が卯刻を好いている可能性があると思っているなら、あのようなメールは寄越さないはずだ。
だから何かといえば、なんでもないのだが。
それで笑芽への裏切り行為が緩和されるわけではないのだ。
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