卯刻が無事、内定を頂けた。
彼は地元で就職することにしたそうだ。
お祝いの電話をしようと、掛けてみたが応答なし。
しばらくして「内定おめでとう」と短いメールをすると、電話が鳴った。
「内定おめでとう。実家暮らし、だよね。もう一人暮らしはする予定ないの?」
「ありがとう。うん、一人暮らしする気はないよ。もう(俺の部屋には)来れなくなっちゃうね」
「寂しいな」
「(ottoが)一人暮らししたら、行くよ」
「え?」
思考が少々停止。
「○○や□□らへんに住めば、俺も行きやすい。そしたら泊まった次の日、大学の連中と遊びにも行きやすい。いいね、○○か□□がいいよ」
冗談なんだろうけど、どんどん話を進めていく彼。
私はただ、彼がそんな先まで私と関係を持とうとしてくれていることが、嬉しくてならなかった。
適当なことを言ってるだけかもしれない。
嘘か本当かなんて、喜びで感覚が麻痺して、正常な判断が出来ない。
愚かしい。
「そんなに言うなら、一人暮らししたら、絶対に来てよ」
憐れな懇願。
「いいよ」なんて、軽く言ってくれるな。
すぐに一人暮らしする気はない。
電化製品揃えるだけで相当な費用が掛かるだろうしね。
就職してから1年じゃ無理だろうな。2年か、3年後。
そう思っていたのに、早々に一人暮らししたくなってきたではないか。
どうしてくれるのよ、卯刻。
どうせ未来なんか見る気ないんでしょ。
だからありもしないビジョンを語るのでしょう。
期待させるかもしれないとか、そんなこと考えていないのでしょう。
考えなしの君だから、今、私との関係があるの。
そこを責めることは、今の関係をなくすことになるから。
私には、出来ない。
未来のビジョンに私が見えたなら、それが例え適当な虚像だとしても、君に溺れた私はそれに幸せを感じてしまうのだよ。
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