帰り際に「私、守樟さんが好きです」と伝えたのです。
そしたら予想以上に、いや予想外に驚いて、かつ堅い雰囲気になってしまった。
私は思ったね、(ああ、やってしまった)と。
「うーん……」
数分(もしかしたら数秒だったのかも)、考え込む守樟さん。
「正直戸惑ってる。全然そんな風(恋人として)に見てなかった」
おっと、それってつまり……いわゆる「セフレ」としての認識と言うことですよね。
怖いなぁ。わかっちゃいたけど、期待してたの。
「人を好きにならないと言ったのは、予防線でもあったんだ」
「私を好きになってもらえないだろうと思いましたが、伝えたくて伝えました」
私は正直に話した。ただ伝えたいだけだったのだと。
「以前は『好き』と言われたら『じゃあ付き合ってみようか』と付き合うこともあった。『好きになるかもしれないから』と。でも結局相手を不安にして振られてしまった。
もう、振り回すのには疲れたんだ」
アタックしてくるのは決まって年下の子で、最初は会えないことや束縛しないことについて気にしていなかったものの、段々と不安になっていき、耐えられなくなっていったという。
結果相手を振り回す形になり終結するのはつらいだろう。
また、私が学生である点もネックなところであると。
学生は社会人に比べて時間が余りある。恋人に対する依存が大きくなりやすい。
そのため、最終的には不安を感じてしまうのではないか、と危惧していたのだ。
「来年はちょっと頑張らなきゃいけないしね」
恋人は作る気がないといったニュアンスを含み言った。
少しだけ付き合えるかもしれないと思っていたのです。
私のことも「好きになるかもしれない」と思ってくれるかもしれないと思ったのです。
でも、そんなことはまったくなくて。
それは非常にショックでした。
でもそれ以上に、守樟さんが私の思いを「予想外」として受け止めていたことにショックでした。
「好きじゃなきゃ、セックスなんてしないのに」
……なんてこと言えないから、仕方ないことなのかもしれないけれどね。
セックスは本当に好きな人じゃなくても出来る。
嫌いじゃダメだけど、ある程度のラインであればOK。
「本当に私に好かれていると思わなかったのですか?」
そこまで驚くことないはずだと思ったので聞くと、
「2回目会ったあとに、食事誘われたときには『マズったな』と思ったけどね」と。
その表現はいかがかしら。
“人”に好かれるのが困るのか、“私”に好かれるのが困るのか。多分前者でしょうけども。
「今の状態で付き合うことはottoに対して失礼だと思う。だから、これからottoのこと好きになりそうだなと思ったら俺から言うから。それまで待っててもらってもいいかな。
もちろん、俺がチンタラしてる間に他に好きな人が出来たらそっちにいって構わない」
なんて、都合いいかな。そう彼は言葉をこぼした。
「本当はこんな中途半端なことしなくて、断っちゃってもいいんだけど……」
きっと今までの彼の経験上、断って引き下がった人はいないんでしょうね。
「保留」という結果にし、距離を保つ。
いや、むしろこれで引き離す気なのかもしれない。
そちらにしろ、踏み込ませないという点では有効ですね。
そしてその後の言葉に私は告白したことを初めて後悔した。
「真剣に思ってくれてる以上、今日みたいなことは今後しない。期待させることになっちゃうから」
ああ……そんな。期待なんてしていないのに、これからもきっとしないのに。
きちんとケジメはつける方なのだと思いました。
お互いのベクトルが一緒ならアソビはOKでも、一方のベクトルが違えばNG。
そこはきちんとしているのね。
(つまりは本当に今まで私自身もアソビでセックスしてたと思われてたわけだよ。)
守樟さんがセックスしたい、私は守樟さんが好きだからしたい、じゃダメなのね。
私はそれでいいのにな。仕方あるまい。
でも、最後少しだけ嬉しいことも言ってくれたの。
「今、恋人候補として遊んでる子は一切いない。コレは本当」
だけれども、セフレはいくらいらっしゃるのかしら?
そんなこと聞けませんでしたけど、ね。
大体、好きになったことないのに恋人候補は以前いたかのような表現。うーん、本当に面白い人。
「コレは本当」という言葉も引っかかりましたが、もう気にするなんて野暮だわ。
恋愛ゲームですもの、いいように軽く受け止めましょう。
考えすぎるとゲームが終了してしまうもの。
今は「保留」「守樟さんに恋人候補はいない」、それだけで十分じゃない。
ポジティブに考えていけばいい。
保留と言うことは望みがある、恋人候補になれるかもしれない。
それで、いいの。
この恋愛は私の思いがあれば成立するもの。
私が守樟さんを好きなら、それでいいの。彼の気持ちは重要じゃない。
(ええ、強がりですとも)
そんな、年の終わりの出来事でした。
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